2012年03月03日
地目変更と農地法許可(届出)の話
こんばんは
行政書士の酒井です。
昨日に続いて、土地の地目についてです。
今日は、「農地法の許可(届出)」と「地目変更」について書いてみます。(農地に関する他の登記についても少し触れます)
「農地」は他人に譲渡したり貸したりする場合や、「農地」を「宅地」など非農地に転用する場合に、「農地法の許可(届出)」が必要です。農地法には3条許可(届出)、4条許可(届出)と5条許可(届出)があります。
順番に「農地法3条」から説明したいところですが、便宜上「農地法4条と5条」から説明します
農地法4条と5条の許可はどちらも「転用許可」になります。
転用とは、農地を非農地にすることで、「畑」を造成して建物を建て、「宅地」にするような場合をいいます。
転用する場合に、許可を取らないでやってしまうと「無断転用」となり、原状回復命令(元に戻す)や、罰則が課せられたりします。
4条と5条の違いですが、4条は「自己所有の農地の転用の場合」で、5条は「他人から農地の譲渡受け、または、賃貸借などで借り受けた土地(農地)を転用する場合」の許可になります。
また、4条・5条の「許可」と「届出」がありますが、これらの違いは、転用する農地が都市計画法に定める「市街化区域」にあるのか、「市街化調整区域」にあるのかで区分されます。
市街化区域は、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的、計画的に市街化を図るべき区域」ですから、農地の転用を厳しい許可にかからしめる必要はありません。
市街化区域の真ん中に農地があったとしても、市街化区域は「市街化を図るべき区域」なので、生産緑地の指定を受けるなどしなければ、宅地並みに課税されることになります。農地のままにしておこうと所有者が考えたとしても、しだいに税の負担が重くなり、「転用してアパートでも建てようかな」となってきます。そこでめんどくさい「許可」を取りなさいというのはおかしいので、市街化区域は特例で「届出」で足りることなっているんですね。
一方、市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」ですので、農地の転用は「禁止」です。禁止されているのにもかかわらず、やむをえない理由があって、一定の要件を満たした場合は、「許可」されることになっているというのが、農地転用許可です。
農地転用許可は書類をそろえて申請すればOKという趣旨のものではありません。転用の目的や条件が悪ければどんなに工夫しても許可されません。じゃあ、とりあえず虚偽の目的でも記載して許可を取ってしまえ!!と考えてもだめですよ
そういうことをすると、しっかり罰則受けることになります。農地法の許可はけっこうハードルの高い許可申請だといえると思います。
地目の話がぜんぜん出てきませんが、農地法の許可書(届出書)は地目変更の登記の添付書類になります。許可書を添付しなくてもちゃんと許可を取っていれば登記申請は通りますが、添付していないと法務局が許可の有無を照会して確認するので、登記申請の処理期間が長くなってしまいます。法務局としても添付してあったほうが手間が省けてありがたいと思います。
また、農地の売買で5条許可を取った場合は、農地の移転後に買主が転用するわけですが、農地の所有権移転登記にも許可書の添付が必要です。(5条許可書は転用後に買主の地目変更登記にも使用します)
3条許可は、「農地を農地のまま移転したり貸したりする場合」に必要な許可です。
4条・5条許可(届出)のような市街化区域か市街化調整区域かでの区別はありません。
農地法3条届出というのは、最近の改正で新しくできたものですが、この届出が必要な場合というのは、「相続等により農地の権利を取得した場合」に必要な届出です。
もともと、相続は包括承継といって、被相続人の権利義務がそっくりそのまま相続人に移るものなので、3条許可は必要ではありませんでしたが、相続によって耕作できない人が相続したりすると、農地が荒れてしまい耕作できなくなるというようなことが起こりえます。日本は国土が狭く農地が少ないので耕作放棄は重大な問題です。そこで、相続の場合、許可は必要でないけれども、届出によって誰が相続したかを把握しようということでこの規定が加えられました。
3条許可と3条届出の違いは、許可は登記申請前に必要(登記の添付書類、効力要件になる)ですが、届出は相続登記の後でもかまいません。(つまり3条届出書は登記申請には必要ありません。)
最後に、登記地目が「宅地」でも「農地法の許可(届出)」が必要な場合についてです。
農地法が「農地」としているのは、登記地目に関係なく、現況が農地であれば、農地法の許可(届出)が必要ということになります。法務局にある登記記録では「宅地」となっているのなら、3条許可書や5条許可書の添付がなくても登記官には分からないんじゃないか?とも思えるのですが、登記地目が「宅地」となっていても、現況が農地であれば、前回の記事に出てきた「課税地目」はちゃんと「農地」になっているんですね・・・
登記申請には、登録免許税の算定のために固定資産評価証明書などを添付しますので、課税地目から現況が農地であることが登記官に分かります。そのような場合には登記地目が宅地でも、許可(届出)の申請をしてから移転登記をしなければならないんですね。
まあ、「宅地」を「農地」に転用するケースは非常にまれなのでそうお目にかかることではないかもしれませんが、登記地目だけで判断すると登記ができないということもあるというお話です。
長くなりましたのでこの辺で・・・
ではまた
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行政書士の酒井です。
昨日に続いて、土地の地目についてです。
今日は、「農地法の許可(届出)」と「地目変更」について書いてみます。(農地に関する他の登記についても少し触れます)
「農地」は他人に譲渡したり貸したりする場合や、「農地」を「宅地」など非農地に転用する場合に、「農地法の許可(届出)」が必要です。農地法には3条許可(届出)、4条許可(届出)と5条許可(届出)があります。
順番に「農地法3条」から説明したいところですが、便宜上「農地法4条と5条」から説明します

農地法4条と5条の許可はどちらも「転用許可」になります。
転用とは、農地を非農地にすることで、「畑」を造成して建物を建て、「宅地」にするような場合をいいます。
転用する場合に、許可を取らないでやってしまうと「無断転用」となり、原状回復命令(元に戻す)や、罰則が課せられたりします。
4条と5条の違いですが、4条は「自己所有の農地の転用の場合」で、5条は「他人から農地の譲渡受け、または、賃貸借などで借り受けた土地(農地)を転用する場合」の許可になります。
また、4条・5条の「許可」と「届出」がありますが、これらの違いは、転用する農地が都市計画法に定める「市街化区域」にあるのか、「市街化調整区域」にあるのかで区分されます。
市街化区域は、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的、計画的に市街化を図るべき区域」ですから、農地の転用を厳しい許可にかからしめる必要はありません。
市街化区域の真ん中に農地があったとしても、市街化区域は「市街化を図るべき区域」なので、生産緑地の指定を受けるなどしなければ、宅地並みに課税されることになります。農地のままにしておこうと所有者が考えたとしても、しだいに税の負担が重くなり、「転用してアパートでも建てようかな」となってきます。そこでめんどくさい「許可」を取りなさいというのはおかしいので、市街化区域は特例で「届出」で足りることなっているんですね。
一方、市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」ですので、農地の転用は「禁止」です。禁止されているのにもかかわらず、やむをえない理由があって、一定の要件を満たした場合は、「許可」されることになっているというのが、農地転用許可です。
農地転用許可は書類をそろえて申請すればOKという趣旨のものではありません。転用の目的や条件が悪ければどんなに工夫しても許可されません。じゃあ、とりあえず虚偽の目的でも記載して許可を取ってしまえ!!と考えてもだめですよ
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地目の話がぜんぜん出てきませんが、農地法の許可書(届出書)は地目変更の登記の添付書類になります。許可書を添付しなくてもちゃんと許可を取っていれば登記申請は通りますが、添付していないと法務局が許可の有無を照会して確認するので、登記申請の処理期間が長くなってしまいます。法務局としても添付してあったほうが手間が省けてありがたいと思います。
また、農地の売買で5条許可を取った場合は、農地の移転後に買主が転用するわけですが、農地の所有権移転登記にも許可書の添付が必要です。(5条許可書は転用後に買主の地目変更登記にも使用します)
3条許可は、「農地を農地のまま移転したり貸したりする場合」に必要な許可です。
4条・5条許可(届出)のような市街化区域か市街化調整区域かでの区別はありません。
農地法3条届出というのは、最近の改正で新しくできたものですが、この届出が必要な場合というのは、「相続等により農地の権利を取得した場合」に必要な届出です。
もともと、相続は包括承継といって、被相続人の権利義務がそっくりそのまま相続人に移るものなので、3条許可は必要ではありませんでしたが、相続によって耕作できない人が相続したりすると、農地が荒れてしまい耕作できなくなるというようなことが起こりえます。日本は国土が狭く農地が少ないので耕作放棄は重大な問題です。そこで、相続の場合、許可は必要でないけれども、届出によって誰が相続したかを把握しようということでこの規定が加えられました。
3条許可と3条届出の違いは、許可は登記申請前に必要(登記の添付書類、効力要件になる)ですが、届出は相続登記の後でもかまいません。(つまり3条届出書は登記申請には必要ありません。)
最後に、登記地目が「宅地」でも「農地法の許可(届出)」が必要な場合についてです。
農地法が「農地」としているのは、登記地目に関係なく、現況が農地であれば、農地法の許可(届出)が必要ということになります。法務局にある登記記録では「宅地」となっているのなら、3条許可書や5条許可書の添付がなくても登記官には分からないんじゃないか?とも思えるのですが、登記地目が「宅地」となっていても、現況が農地であれば、前回の記事に出てきた「課税地目」はちゃんと「農地」になっているんですね・・・
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登記申請には、登録免許税の算定のために固定資産評価証明書などを添付しますので、課税地目から現況が農地であることが登記官に分かります。そのような場合には登記地目が宅地でも、許可(届出)の申請をしてから移転登記をしなければならないんですね。
まあ、「宅地」を「農地」に転用するケースは非常にまれなのでそうお目にかかることではないかもしれませんが、登記地目だけで判断すると登記ができないということもあるというお話です。
長くなりましたのでこの辺で・・・
ではまた

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Posted by SIGE at 02:07│Comments(0)
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