こんにちは
行政書士の酒井です。
今回は「相続人」と「法定相続分」について書いてみます。
前回までの記事の要領で、被相続人の相続にかかる戸籍類をすべて集めると、
相続人となるべき人(以下、相続人といいます)を確定することができます。
相続人の順位及び法定相続分は民法に定められていて、以下の表のとおりになります。
【表】
上記の表のルールを、事案に当てはめていけばいいわけですが、ちょっと分かりにくいですよね
具体的な相続関係図を示して、事案で解説していきます。
【図1】
これは、上記の表の①です。
Aが被相続人で、その配偶者Bとの間に甲、乙、丙の子がいるという事案です。
(AとBの間の2本線は、法律上の婚姻関係にあるという意味です。後に1本線も出てきますが、それは事実上の婚姻関係で婚姻届を出していない男女(内縁)をあらわしています。)
Aが亡くなった場合、配偶者Bの法定相続分は2分の1、甲乙丙の子らは、2分の1を子の頭数で除した分が法定相続分になります。(B 6分の3、甲乙丙 それぞれ6分の1)
【図1】には、Aの親や兄弟姉妹など他の相続人は書かれていませんが、たとえA死亡時にAの両親や兄弟姉妹がいたとしても、配偶者と子が相続人になる場合は、相続人となることはありません。
当事務所への相続のご相談で、夫の兄弟や親が遺産分割に介入してくるのだが・・・というものがありますが、事実上の問題は別として、法律上は親、兄弟は遺産分割に参加することはできません。
【図2】
これは、表の②の事案で、AとBとの間に子がいない場合です。
この場合、相続人は配偶者のBと直系尊属(この場合はAの親ですが、祖父母も直系尊属です)の甲と乙になります。
配偶者の法定相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1で、直系尊属が複数のときは頭数で除します。
(配偶者B 6分の4、甲乙 それぞれ6分の1)
【図3】
これは、表の③の事案で、AとBとの間に子がなく、直系尊属甲乙も既に死亡している場合です。
この場合、相続人は配偶者のBと兄弟姉妹のXとYになります。
配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1で、兄弟姉妹が複数のときは頭数で除します。
(配偶者B 8分の6、XY それぞれ8分の1)
表②③(図2、3)は子がいない場合ですが、夫婦の財産が、親や兄弟姉妹に相続されるという点に注意が必要です。
仲が円満ならばいいかもしれませんが、円満でない嫁姑で遺産分割協議というような事態になりそうなときは、遺言書を作成しておきましょう。
【図4】
これは、相続人となるべき子の甲が相続放棄、乙がAより先に死亡している場合です。
乙がAより先に死亡している場合、乙は、相続人になることができません。しかし、乙に子Yがいる場合は、Yは乙に代わって代襲相続人となります。また、YもA死亡時に既に死亡している場合は、Yの子が相続人となります。
一方、甲が相続放棄した場合はどうでしょうか?
相続放棄とは、「初めから相続人とならなかったものとみなす。」ものなので、上述の乙がA相続開始時に既に死亡している状況と似ています。ですが、相続放棄の場合は、放棄者以降の相続関係がなくなってしまいますので、甲の子Xは甲を代襲して相続人にはなりません。
図4の場合、Aが死亡して相続人となるのは、配偶者BとAの孫Yの二人となります。
(Bの法定相続分2分の1、Yの法定相続分2分の1)
【図5】
図5は、AB夫婦間の子甲乙のほか、Aと内縁の妻Xとの子Yがいる場合です。
この場合は、Yについての認知があるかどうかで異なってきます。
まず、法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子は、非嫡出子といいます。(Yは非嫡出子)
法律上の夫婦の間に出生した子は嫡出子といいます。(甲乙は嫡出子)
嫡出子に相続権があるのは当然で、相続分は上記表①のとおりですが、非嫡出子はAの認知されていれば相続人となります。ただし、嫡出子と非嫡出子では相続分に差がつけられていて、非嫡出子の相続分は嫡出子のそれの2分の1となります。
上記の事案でAがYを認知しているとして相続分を算出すると、Bの法定相続分10分の5、甲乙の法定相続分はそれぞれ10分の2、Yの法定相続分は10分の1ということになります。
嫡出子と非嫡出子の相続分に差があることについては議論があり、法の下の平等を定めた憲法に反するとして下級審ながら、相続分を平等とする判断もあるので、将来民法が改正され、平等になる可能性も高いです。
ここに示した具体例がすべてではありませんが、相続人になる者の確定について参考になったでしょうか?
相続人となった者は、遺産分割協議へ参加する者ということになります。
次回は、その「遺産分割協議」について書きます。
ではまた
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